研究成果を活かし自走カプセル内視鏡の社会実装を目指す

2015年度に実施された第1回「しがニュービジネスプランコンテスト」では、医療分野と高度ものづくり分野にまたがるビジネスプランが最優秀賞に選ばれた。機械システム工学を専門とし、企業や大学で20年以上もこのような境界領域分野での課題に取り組んできた大塚尚武氏。起業に至った経緯からビジネスプランコンテストへの期待、また得たものについてうかがった。
苦痛のない自立医療ミニロボットの実現に向けた挑戦
1950年、日本人医師により世界で初めての胃カメラが誕生した。画期的な内視検査は、がんなどの重大疾患の診断や治療に活用されている。しかし、このような内視検査は、胃や大腸といった器官に限定された技術であり、かつ苦痛や恥ずかしさを伴うといった課題がある。 大塚氏は龍谷大学在職時より、苦痛や恥ずかしさの少ないカプセル内視鏡に着目し、そのカプセル内視鏡の「自走システム」についての研究を続けてきた。主要な技術は概ね確立しており、小型磁石を内蔵した「ヒレ」を持つ自走カプセル内視鏡は、体外から変動磁場を与えることで運動を自在に制御できる。これにより食道、胃、小腸、大腸の全消化管を1時間程度で苦痛なく一度に検査する技術の確立を目指す。 起業については、実は龍谷大学在職時から想いがあったという。しかし、定年まで勤め上げてほしいという家族の説得や教員としての責務もあり、定年退職後に満を持して株式会社ミューを設立した。長年の研究成果の実用化に向けた熱意とチャレンジ精神、待ちに待った起業。大塚氏は自走力プセル内視鏡の事業化に向けて走り出した。
ビジコンで事業化を加速する
事業化に向けて、大塚氏は、いくつかのビジネスプランコンテストに出場しており受賞歴も多い。2015年度のしがニュービジネスプランコンテスト「最優秀賞」だけでなく、過去には第11回「しがぎん野の花賞」も受賞したことがある大塚氏は、獲得賞金以上にパートナーになり得る企業との出会いにこそコンテストの価値があるという。研究開発に強みがあるミューにとって、大手メーカー等製造業者やユーザーとなり得る医療機関との協業は不可欠だ。コンテストで露出機会を自ら創出し、事実そういった企業との出会いにつなげてきた。 創業して5年、目下の最大の課題は、医療機器として「薬機法(旧薬事法)」に基づいた管理医療機器(クラスII)の認証取得だ。認証取得に必要な1億数千万円もの経費や申請手続のノウハウがない中で、コンテスト出場によるネットワークの拡大は、法規制や資金調達、経営といった研究開発以外のところへの助言や支援につながるため、他では得難い価値がある。滋賀県内外に存在するビジコン等の機会を十二分に活かし、事業化を加速する。自らの研究成果を活用し、滋賀県から世界の医療に貢献したいとする大塚氏の想いは熱い。
地域応援 vol.03 滋賀(2016年10月 発刊)

全消化管の内視検査を実現する自走カプセル内視鏡(愛称:ミニマーメイド)