環境DNA分析で世界の水中生物の分布を見透す

チーム名
環境DNAラボ
代表者
山中 裕樹
所属
龍谷大学 理工学部 講師
参加
第2回滋賀テックプラングランプリ
受賞
最優秀賞 / ヤンマー賞

「 天気予報のように、将来は世界の魚類分布の動向を予測できる世界を創りたい 」と話す龍谷大学の山中裕樹さんは、 水に混ざりこんだ DNA から魚種を特定する分析技術の開発を進めている。琵琶湖に親しんで育ち、琵琶湖の魚を守るために研究の道を進んだ研究者が、環境DNA分析による新たな生物情報インフラの構築を目指す。

水中に漏れ出たDNAから棲んでいる魚を特定する

 学生時代から一貫して淡水魚の生態研究に携わってきた山中さん。魚の生息環境を守るためには生態を深く理解することが不可欠だが、海や河川、湖沼に棲む魚類の調査には、 水中に潜り、漁具を使って捕獲する必要があり、労力やコスト面での負担が大きい。加えて、国内だけでも 4,000種にのぼる魚種を目視で決定するためには、 経験と高度なスキルを要する。山中さんは、この現状を打破する「水を汲むだけで棲んでいる魚種を特定する」という技術を提案している。水中に遊離した魚のDNAを分析することで、そこに棲む魚種を特定できれば、水産資源の管理や希少種保護などに貢献できる。山中さんとその研究仲間は、この技術を確立するために世界初の研究に着手した。  こうして開発された環境 DNA分析の仕組みは、880種の魚類DNAのデータベースをもとに、汲んできた水に含まれるDNAと合致するものを探すといったもの。沖縄美ら海水族館での実験では、わずかバケツ1杯程度の水から、4つの水槽で飼育されている魚類の 93.3%にあたる168種の検出に成功した。

生物情報のインフラを作る

 多くの人に思いを届け、共に解析技術の確立と実用化を進める仲間を集めるために参加した滋賀テックプラングランプリでは最優秀賞とヤンマー賞をダブル受賞した。その後、仲間とともに環境DNA学会を立ち上げ、技術の深化と拡大の準備も進んでいる。山中さんの最終的なゴールは、世界中で水棲生物のモニタリングを行い、アメダスのような解像度と規模で情報提供をするインフラを作ること。データが蓄積されれば、海洋資源の動向予測も可能となり、精密な資源管理に大きな効果が期待できる。希少種や外来種の早期発見、養殖における適切な給餌量制御や病気の早期発見にも応用できるだろう。「採水・回収・濾過工程の自動化技術の開発が急務です。十数年後には分析の全自動化、全国規模での導入を実現したいですね。そのためにも、一緒にこの技術の実現に力を貸してくれる仲間を探しています」。大好きな琵琶湖で成功モデルを作り、技術を世の中に出していきたいと語る山中さん。琵琶湖発で世界を変える挑戦が加速する。

滋賀テックプランター vol.02 (2018年4月 発刊)

水中に漏れ出たDNAを濃縮し、解析する