実空間で見えなかった領域をスペクトルで可視化したい

チーム名
スペクトルバンク
代表者
成瀬 延康
所属
滋賀医科大学医学部医学科准教授
参加
第1回滋賀テックプラングランプリ(旧チーム名:元気モニタリング)
受賞
オムロンベンチャーズ賞

16世紀末にオランダのヤンセン親子により顕微鏡が発明されて以降、人類は細胞、分子、原子というミクロな世界を「見る」技術を発展させてきた。拡大して観察する手法とは異なり、周波数やエネルギーなど別の軸で「見る」ことで、これまで見えてこなかったものの性質を明らかにするのが、滋賀医科大学准教授の成瀬延康さんだ。

スペクトルデータベースによる農業情報革命を

 光学顕微鏡から電子顕微鏡など様々な方法で小さな世界の物体をみることに興味をもっていた成瀬さん。実空間軸で見ることで物体の形状はわかるが、形や色がよく似ている物体の状態を識別することに難しさを感じていた。そこで注目したのが、波長を軸としてスペクトルでものを見るという考え方だ。植物のスペクトルを見ることで、生育状況や病気の有無、水分状態などを判別できるというのだ。北海道大学時代に高橋幸弘教授と出会い、宇宙から超小型衛星、上空から液晶波長可変 (LCTF)フィルターカメラを搭載したドローン、地上ではスマホ一体形分光器を使い、植物のスペクトルデータベースの構築を目指した。

滋賀テックプランターを通した連携と事業創出

 研究成果の社会実装に向けて、機器の開発やデータ取得などの連携先開拓を目的に滋賀テックプランターに参加。すぐに東京都墨田区の町工場、株式会社浜野製作所と連携して、スマホ一体型分光器の試作品を開発した。2017年1月の第1回滋賀テックプラングランプリではファイナリストとして発表し、2017年9月には第4回アグリテックグランプリにも高橋教授と共にエントリーし、最優秀賞とJT賞を獲得、株式会社ポーラスター・スペースを設立した。

異分野連携により社会課題の解決を加速する

 成瀬さんが農業の次に注目したのは医療分野だ。顔や手足の血流量や脈拍、ヘモグロビン酸素飽和量を非接触で画像計測・動画モニタリングし、その結果から心理状態を把握するというプランで、第2回滋賀テックプラングランプリでもオムロンベンチャーズ賞を獲得した。現在までに、顔の血流状態から、緊張状態とリラックス状態の判別が可能になっている。将来的には、言葉を発しない患者の心理状態の把握に活かしつつ、美容分野への展開や新たなコミュニケーション手段の開発を目指す。滋賀テックプランターでの多くの出会いを通して「異分野連携にこそイノベーションの源泉があると考えるようになった」と話す成瀬さん。今度はどの世界をスペクトルという目で見ていくのだろうか。

滋賀テックプランター vol.02 (2018年4月 発刊)

スマホ一体型分光