教授とURAの出会いが、音の研究を事業化へ導いた

チーム名
株式会社ソニックアーク
代表者
西浦 敬信 [取締役CTO]
参加
滋賀テックプラングランプリ2018
受賞
オムロン賞

滋賀テックプラングランプリ2018において、超指向性スピーカーにより音を自在に操ることで空間を分割/共有する「空間シェアリング」のテーマでオムロン賞を受賞した立命館大学 西浦教授率いる「+Rサウンド空間研究所」。2020年2月7日「株式会社ソニックアーク」として法人設立に至ったきかけは、URA(University Research Administrator)として研究支援を続けてきた原氏の代表取締役CEOとしての参画だった。

文明を進化させる「音」の技術

 「文明の発展が騒音の発展であってはならない」と、語る西浦氏。 総務省の平成 29 年度公害苦情調査によると、地方公共団体の公害苦情相談窓口に寄せられる苦情件数は大気汚染や悪臭を超えて騒音問題が最も多かった。こうした背景をうけて、騒音に対して音の発生源や広がりを分析することで騒音被害を最小限に抑える「音の封じ込め」や、別の音を被せることで聴覚的にマスキングする「快音化技術」など独自の視点で実用化を目指してきた。指向性の高い超音波スピーカーを用いて異なる音空間を作り出す「空間シェアリング」は、同じ部屋にいながら激しいBGMのエアロビクスと、ゆったりとしたBGMのヨガを楽しむことができ、立命館大学の体育館にも実装されている。  社会実装を見据えて多くの企業との共同研究を進めていたが、いざ法人化・事業化を意識したプランを考えてみると、実際の現場の課題や想定顧客など具体的な情報が不足していることを実感したという。そこで社会の反応を確認するためにエントリーしたのが滋賀テックプランターだった。

熟慮したプラン、起業の決め手となったURA

 実用化を想定したプランを発表することで得られた、企業や自治体からの声や反響は大きく、滋賀テックプランターではオムロン賞を、その後開催されたディープテックグランプリではロート賞と三菱電機賞を獲得。その結果、事業化に向けたディスカッションに訪れた企業数は10を超えた。さらに大学のリサーチオフィスへの相談や、リアルテックスクール(P21)など大学内外の制度も活用しながら、法人化へ向けた準備を着々と進めてきた。大きな転機は、長年URAとして各方面から研究を支援してくれた、原氏の本格的な参画だった。「私とは畑違いの運動生理学の研究者であり、かつURAや海外での会社経営など多様な経験を有する彼が人生をかける決意をしてくれたことは、私にとっても法人化に踏み切る大きなきっかけでした」と西浦氏は語る。

未来の地球へ、豊かな音社会を届ける

 「経営を任せることで、私は得意な研究開発に集中できる。これまで専門家からの助言程度に留まる事が多かった地元企業への提案も、結果にまでコミットする具体的なサービスへと落とし込めるのが楽しみ」と胸を躍らせる。原氏は「世界を見渡してみたからこそ、音を制御する技術は人類を進化させると確信できました。はやく、日本から世界へこの技術を拡げたいですね」と力強く語る。「今後は、工場の切削加工音、エアコンなど電子機器作動音の抑制や快音化まで、企業との共同研究を加速させていきたい」と情熱的に語る西浦氏。私達の想像を超えた豊かな音社会が、静かに歩み寄っているのかもしれない。

滋賀テックプランター vol.04 (2020年4月 発刊)

第6回ディープテックグランプリでの 受賞写真(右から2番目が原氏)