ロボティクスを活用し、視覚障害者の仕事にやりがいを

視覚障害者は、日本で164万人、アジア圏発展途上国で2140万人とされている。障害者雇用促進法による企業での雇用増、バリアフリー新法による大学入学などが増加傾向にあるが、社会的な自立はまだ難しいのが実状だ。視覚障害をもつ人の多くが、自宅開業ができて長く働くことのできる、あん摩マッサージ指圧師になる。しかし、関氏のヒアリングでは、視覚障害者と晴眼者で学習環境に差があり、多くの視覚障害は仕事にやりがいを持てていないとわかってきた。
自らが資格保持者となり、課題を深堀り
関氏は、かねてから身体障害者のケアに関心があり、 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を取 得。現在は大学教員として大学生や高校生への看護マッ サージ教育および研究に従事している。着目したのは、 マッサージ手技教育における課題だった。「晴眼者の養 成学校を卒業している私も、授業だけでは手技の習得 が難しく、日々の自己練習が重要だと感じていました。 しかし視覚障害者は、模型があっても手の位置や、速度 などが認識できず自己練習ができません」。現場をよく 知るからこその深い課題認識が、関氏の情熱の源だ。
ロボット工学の西岡先生とのタッグ
医療福祉工学に従事する研究者の西岡靖貴氏との出会いがこのシステム開発のきっかけとなった。二人は、マッサージ技術という共通の関心を持っており、看護学生・看護師を対象としたマッサージ技術に関する共同研究を行っている。滋賀テックプランターでは、その技術を応用し、視覚障害者が模型にマッサージや指圧を施術した際に、力加減・手技速度等の異常(熟練者との技術差)を施術者に伝達するプランを提案した。例えば、施術時に力が強すぎるなどの異常があった場合、目の見えない施術者に音や体感的で伝えるといったように、マッサージ技術をリアルタイムで学習できる。そうすれば、視覚障害者が一人で自己練習ができるようになる。
企業賞、研究費を獲得し、着実に前進
グランプリでは、明確な課題感を評価され、パナソニックアプライアンス社賞を受賞した。その後、パートナー企業や、看護教育用人体模型を開発する株式会社京都科学とともに、盲学校への現場視察なども行い、解決策の実現へ向けて議論を続けていた。そうした動きの中から、コンソーシアム構成機関である関西みらい銀行が実施する共同研究助成金(P25)に京都科学と応募し、見事採択された。本研究費を活用し、これまで腕部分のみだった開発を全身へと広げられ、その後は盲学校の教員から使用感の評価も得られる予定だ。「一人で納得いくまで練習できれば、もっとやりがいをもって仕事に臨めるのではないでしょうか。日本で仕組みをつくり東南アジアの視覚障害者にも使ってもらえるようにしたい」。関氏の情熱が多くの仲間を巻き込み、プランは着実に実現へ向けて動きだした。
滋賀テックプランター vol.05 (2021年4月 発刊)
