世界中の悪臭問題は、光触媒で解決してみせる!

トイレの臭い、タバコの臭さ、生ゴミや生活排水などのなんともいえない臭い……現代社会では常に生じているこれらの臭いの原因物質の多くは、アンモニアやタール、アセトアルデヒドなど有害物質に由来している。そんな原因物質を特別な装置や特殊な作業の必要なく分解することができる魔法のような反応が、光触媒だ。
万能とも思える光触媒の弱点
光触媒とは、その名の通り「“光”が当たることで“触媒”反応がおこる」現象のこと。それによって周囲の物質を分解することにつながるため、外壁に使えば汚れが落ちやすくきれいな状態を維持できるし、カーテンに使えば室内空間のにおい成分やアレルゲンを分解することができる。そんな夢のような技術として、すでに私たちの生活に溶け込んでいる技術だ。 しかし、万能とも思える光触媒にも、まだ課題は残っている。その代表例が、触媒能を発揮するために必要となる光の問題だ。触媒能を発揮するには380 nm以下の波長、つまり紫外線が必要となる。近年の窓ガラスやカーテンには紫外線を遮断・吸収する部材が使われているため、基本的に室内空間の紫外線量は極微量だ。そのため、現在の利用用途の多くが外壁や屋根など屋外での利用にとどまっている。もちろん紫外線を照射すれば室内でも用いることはできるが、紫外線環境下では、人体はもちろんのこと机も椅子も家電も、あらゆるものが劣化してしまうため現実的ではない。
可視光でも光触媒反応が起きる!?
蛍光灯の光などの可視光でも光触媒反応を起こすことができれば……そんな研究が世界中で盛んに進められている。日本でも、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトをはじめ、多数の研究開発が進められており、一部実用化も始まっている。松宮祐介氏の研究室では、従来使われてきた酸化タングステン(WO3)による可視光型光触媒反応ではなく、金ナノ粒子の周りに酸化チタンを配置した独自の素材を開発し、光触媒能の評価を進めている。実際に、光触媒として知られている酸化チタンと比較したところ、可視光照射時に高い分解能を示すという結果が得られた。 代表の松宮氏は現在修士2年生として研究を進める傍ら、本テーマを含めた金ナノ粒子の可能性を武器に様々な社会課題に挑むため、滋賀県立大学発ベンチャーの設立に向けて動き出している。世界に先駆けて、安価で効率のよい可視光型光触媒が実現し、屋内のあらゆるところでの利用される日もすぐそこまできている。
滋賀テックプランター vol.03 (2019年5月 発刊)

光触媒によるメチレンブルー(有機色素)の分解。光触媒なし(左)と光触媒あり(右)。1時間の可視光照射で右側の色素が分解されていることがわかる。