生物由来の接着分子から産声をあげる 新たな医療素材

外科手術において組織を接着する縫合技術に変わり、医療用接着材の市場は拡大を続けているが、接着力の強度や安全性の観点から課題も多い。このような課題を解決すべく、小型のイカの一種「ヒメイカ」由来の医療用接着材の研究開発を進めるのが長浜バイオ大学准教授の小倉淳さんのチーム「The BioGlue」だ。
ヒメイカ由来のバイオグルーの可能性
小倉さんが注目したのは、ヒメイカというイカの一種が持つ接着分子だ。ヒメイカは、水中で生活する際に海草などにアンカリングするために表皮から接着分子を分泌して利用しており、分泌する成分を変えることで容易に接着と剥離を繰り返している。剥離試験、 剪断強度試験の結果から、接着力は瞬間接着剤には多少劣るものの強力であり、何より毒性がなく、生分解性があるために、医療用途として優れた素材と言える。
長浜バイオ大学の技術シーズが社会実装へ
2017年7月、研究成果をもとに世の中を変えていきたいという熱いパッションと、学生に研究者の可能性を感じてもらいたいという考えのもと、第2回滋賀テックプラングランプリに出場し、タカラバイオ賞、関西アーバン銀行賞、オーディエンス賞を受賞。その後、企業賞をきっかけに関西アーバン銀行からは研究助成を、さらにグランプリで出会った多くの大手企業と共同研究や事業連携の話を進めている。
地域発ベンチャー企業が 世界の医療分野を前進させるか
現段階では、小倉さんの進める研究開発はヒメイカ由来の素材で展開されているが、オウムガイ、ムール貝、カエル、サンショウウオなど、他の生物由来の接着分子も並行して研究しており、その分析も進行している。「生物は、人間が考えもつかないような様々な素材を産生しており、これらを活用した製品で医療を変えてみたい」と小倉さんは話す。現在、研究開発型ベンチャーの設立に向けたチーム形成と準備を整えると共に、アーリーパートナーを募集している。滋賀から生まれた生物由来の素材が世界の医療分野を前進させる未来に期待したい。
滋賀テックプランター vol.02 (2018年4月 発刊)

ヒメイカ

接着力